【短編・恋愛小説】『透花(とうか)と陽翔(はると)──幼馴染じゃ、いられなくなった日』

※これは「ずっと一緒だよ」の過去のお話、純愛物語です。(前日譚)
『透花(とうか)と陽翔(はると)──幼馴染じゃ、いられなくなった日』

目次
序章:幼馴染の距離感(変わらないはずだった日々)
透花(とうか)と陽翔(はると)は、物心ついた頃からずっと一緒だった。
家も近所で、親同士も仲が良く、学校でもいつも隣にいた。

「お前ら付き合ってんの?」
そんな冷やかしを受けるのも日常茶飯事だった。
「は? そんなわけないし!陽翔とは幼馴染だよっ」
透花は笑いながらそう言ったけれど、どこか心の奥に違和感があった。
幼馴染だから、当たり前のように一緒にいる。
だけど、それがずっと続くものなのか、時々ふと不安になることもあった。
ある日の帰り道、陽翔がふと口にした。

「なあ、もし俺ら、離ればなれになったらどうなるんだろな?」
「え?」
唐突な問いかけに、透花は足を止めた。
「……そ、そんなこと、考えたこともないし(苦笑)」
「だよなー」
陽翔はどこか納得したように頷き、歩き出した。
透花はその背中を見つめながら、
「当たり前」の関係が、いつまでも続くわけではないのかもしれない‥
そう思うと、ほんの少しだけ、胸がざわついた。
その夜、透花は布団に入りながら天井を見つめていた。
「離ればなれになったら…?」

思わずスマホを開き、陽翔との過去の写真を遡る。
幼稚園、小学校、中学校──そして今。
いつも隣にいた陽翔。
「なんで急にそんなこと言うのよ、バカ陽翔っ‥」
手のひらをぎゅっと握りしめ、静かに目を閉じた。
第一章:美咲の登場(小さな違和感)

美咲(みさき)は透花と同じクラス。
黒髪で真面目そうな見た目だが、どこか人を見下したような冷ややかな瞳を持つ。
透花とは特別仲がいいわけでもなく、話すこともほとんどない。
しかし、彼女は学年トップの成績を誇る優等生で、
教師たちからの評価も高かった。
「透花、靴、どうしたの?」
ある日、透花が体育館に行くために靴箱を開けると、
いつも履いている「体育館シューズ」が見当たらなかった。
「……え?」
クラスメイトの何人かが不思議そうに透花を見つめている。
「もしかして、誰かが間違えて履いていっちゃったとか?」
友人が言うが、透花には”ほんの少し”心当たりがあった。

そういえば、美咲が最近、こちらをじっと見ていることが増えた。(気がする)
そして、時折、何かを考えているような冷たい視線を向けてくる。
(まさか……ね)
確証はない。
透花は誰にも言えず、黙って上履きを履いた。
その日の昼休み、透花は陽翔の姿を探した。
そして、目にしたのは、美咲と話している陽翔の姿だった。

(なんであんなに楽しそうに話してるの…仲良かったっけ‥?)
心の奥がぎゅっと締めつけられる。
第二章:すれ違いと勘違い(「もう昔みたいには戻れないの?」)

透花は陽翔を少し避けるようになった。
話しかけられても、どこか素っ気なく返してしまう。
そんなとき、
陽翔もまた、透花が他の男子と楽しそうに話しているのを見て、
なんとも言えない気持ちになっていた。

(……なんで、こんな気になるんだ? 別に普通のことじゃん‥)
ある日、放課後の帰り道。
「もしかして透花、怒ってる‥?」
陽翔がぽつりと言った。
透花は驚き、そして何か言い返そうとしたが、
心の中に渦巻く感情をどう言葉にすればいいのか分からなかった。

「別に……」
「別に?」
陽翔は眉をひそめ、じっと透花を見つめた。
「透花、俺に何か隠してるの?」
透花は唇を噛んだ。
自分のこの胸のざわつきの正体が、
嫉妬なのか、それともただの違和感なのか、
まだ自分でも分からなかった。
第三章:決定的な出来事(本当の気持ちに気づく)

透花の靴(体育館シューズ)がなくなった事件の翌日。
陽翔が透花を探し、無言で靴を差し出した。
「‥え?!」
「……見つけた。
透花、ちゃんと言えよ。‥なんていうか‥‥うーむ。。とにかく、困ってるならまず俺に言って」
陽翔は、少し顔を赤くして言った。
透花はポツリと漏らす。

「だって、最近陽翔は美咲とばっかり…」
その瞬間、陽翔は目を見開いて驚いた表情を見せた。
「え‥‥あ、美咲とは、生徒会のことを話してたんだ。
色々『生徒会のことで相談に乗って欲しい』って言われたから話してただけだよ?」
「‥‥そ、そうなの‥?!」
「うん‥‥」
2人は、頬を赤くした。

・・・そのとき、
こっそりと、会話を盗み聞きしている者がいたが、そのことに透花と陽翔は気づかなかった。
透花は涙を拭いながら、小さく息を呑む。
陽翔は少しの沈黙の後、透花の肩に手を置いた。
「……透花がそんなふうに思ってくれてたなんて、俺知らなかった。」
「うん、ずっと気になってた……陽翔は?」
「……実は俺も、、、透花のことばっかり気になってた‥」
エピローグ:「ずっと一緒にいたい」

陽翔の言葉を聞いて、透花は一瞬、思考が止まった。
「……俺も、透花のことばっかり気になってた。」
それが、ずっと求めていた答えなのに。
それが、ずっと望んでいた言葉なのに。
「……本当に?」
透花の声は、震えていた。
陽翔は静かに微笑んで、彼女の髪をくしゃっと撫でる。
「バカ透花、俺が嘘つくわけないだろ?」
透花の頬が、ふわりと熱を帯びた。
もう隠せない。もう誤魔化せない。
(これが、「好き」なんだ。)
陽翔が軽く息を吐き、ゆっくりと視線を落とした。
「……じゃあさ。」
「なに?」
「俺と‥‥ずっと一緒にいてくれる?」
透花の心臓が跳ね上がる。
真っ直ぐな言葉。揺るぎのない瞳。
「……うん。」

透花は小さく頷いた。
陽翔の隣が、一番落ち着く。
これまでも、これからも。
陽翔は満足そうに笑い、ふわりと透花の指先を掴んだ。
透花は驚いて、指を見つめる。
「えっ……?」
「い、いいだろ?」
ふたりの指が、そっと絡む。
これまでのように、当たり前の仕草のように。
だけど、確かに、何かが変わった。
夜の帰り道
空を見上げると、星が綺麗に瞬いていた。

透花と陽翔は、ゆっくりと帰り道を歩いていく。
足並みを揃えるように、自然と歩幅が合う。
いつもと同じはずなのに。
世界が、少しだけ違って見えた。
「陽翔、ずっと一緒にいてね。」
「……当たり前だろ。」
透花は静かに笑った。
いつまでも、この幸せな時間が続けばいいと思った。
だけど、、、その願いが叶わないことを、この時のふたりはまだ知らない。
──そして後日、、、
2人が、とんでもない”コト”へ導かれるなんて、誰も予想できなかった。。
『透花(とうか)と陽翔(はると)──幼馴染じゃ、いられなくなった日』
寿司娘
続編:「ずっと一緒だよ」(※当サイトで読めます)
